序章:「そんなん、おもんないわ。」と、コルドバのオリーブ農園。

by Monkurious
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勤めていた会社を辞めるという決断はしたものの、その後の具体的なことは決めていなかった。

退職の翌週に宮古島に行くということ以外は。

スペイン行きのアイデアはずっと頭の中にあったけれど、決めきれずにいた。



あっという間に退職の日が来て、
新卒から6年半勤めた、大変なこともたくさんあったけど好きだった会社を辞めた。

翌週、宮古島にやって来た。



宮古島には、
先に退職してしまったけど、
同じ職場でとてもお世話になった一風変わった*先輩が住んでいて、
今回久しぶりに会えることになっていた。

(*一風変わった:毎朝1時間半みっちりアシュタンガヨガをしてエッジの向こう側に逝ってから出社。
夏場はサーフィン焼けでスーツにガングロ。
オーガニック・マクロビオティック食品の輸出入商社だったからか、職場にはヨガや自然を愛する人が多かった。)

久しぶりに会った先輩はまた一段と肩の力が抜けていて、
大阪のオフィスビルで働いていたとは思えない穏やかな雰囲気だった。

 

色んな思い出話や宮古島での住み心地について話した後、
「で、どうすんのこれから?」と言われたので、

「ん〜スペインのxxx社(私たちの元取引先)のオリーブ農園覚えてます?
あのオリーブ農園の風景が忘れられなくて。
そこに住み込みで収穫体験に行って、その後有機農家巡りをしながら
1年くらいスペインに住みたいなとか一瞬思いましたけど、
まぁそんなのクレイジーだし、

あんまり間空け過ぎずに
次の転職先を探した方が無難かなと思ってます。
せっかく前職で得た経験とか繋がりとかあるのに
スペイン行くからって1年も空けたら
もったいないって友達も言うし。
あ、あとは知り合いから国内の大学でのMBAも進めてもらったりして、
無職の間何もしてないと響き悪いし、MBAなら何か今後役に立つこともあるだろうし。」

 

先輩は、目を丸くして、

「へ?何それ。そんなん全然おもんないわ。」

と言った。

「うわおもんな。まだ29かそこらやろ?
そん時の1年海外行くくらいどうってことないって。
行きたいと思った時に行っといた方がええと思うで、知らんけど。

若いんやし、おもろいこと経験した方が身になると思うで。
え?29歳の時?スペインのオリーブ農園で収穫してました!ていう方がよっぽどおもろいやん。

やりたいことやったら?
なんかがっかりやわ。」

確かその後の会話はさほど盛り上がらず、ゲストハウスまで送ってもらって別れた。

 

その夜、
寝付けなかった。
相変わらずこんがり小麦肌の先輩が乱射した「おもんないわ」のフレーズが
頭を巡ってなんだか腹が立って寝れないのだ。

つまり私っていう人間もしくは私の人生おもんないってことやろ?知らんけど。

え、なんなん。おもんないって何!!
おもんないの私?え!?
私の人生おもんないとか絶対イヤ!!!
私おもんない奴とか絶対イヤ!!

 

なんだか謎の悔しさでヒートアップして
ゲストハウスの平たいベッドの上で
例のスペインコルドバのオリーブ農園の社長にメールを書いて送信ボタンを押した。

「3年前御社のオリーブ農園を訪問した時、
農園内の宿に泊まって収穫を見にきたら良いよ、星が綺麗だよ。
と笑い話していたのを覚えていらっしゃいますか?
来年、オリーブ農園にぜひ数週間収穫体験に行きたいのですが可能ですか?
その後1年かけてスペイン各地の有機農家を回って巡りたいのだけど、
知り合いの農家を紹介してもらうことは可能ですか?」

完全に勢いで送ったメールだったが、
まさかの即返事が返って来た。
「OK、ちょっと考えてみるよ。知り合いあたってみるよ。」

え!まじですか!考えてくれるの!知り合いあたってくれるの!!

「他の地域の有機農家を回りたいなら、うちん家にスーツケース置いて回って来たら良いよ。いつ頃来る?」

同社、というか800軒ほどのオリーブ農家から成るこの農業組合は、スペインの中でもオリーブの有機栽培を先駆的に取り入れた農業組合の一つで、他の地域の有機農家にも知り合いがいるとのことだった。

クレージーだと思っていたプランはあっさりと決まり、
スペインに行くことにした。

はい、ここで今一度見てみましょう。
私の当時の発言を。

「あんまり間空け過ぎずに
次の転職先を探した方が無難かなと思ってます。
せっかく前職で得た経験とか繋がりとかあるのに
スペイン行くからって1年も空けたら
もったいないって友達も言うし。
あ、あとは知り合いから国内の大学でのMBAも進めてもらったりして、
無職の間何もしてないと響き悪いし、MBAなら何か今後役に立つこともあるだろうし。」

だっさ。

この中に私自身の意志がありますか?無いです。
無難で、”自分じゃない誰か”の意見だけを鵜呑みにした、それなりに響きの良い選択を
私は誰のためにするのでしょう?
私は誰に向かって生きているのでしょう?

やっぱりこの時の私は、

自分の意志で、自分の頭とハートで考えて、
自分で決めるチカラを
もう一度取り戻す必要があった。




「(本当は)〜したいけど、でもxxだし。。」を乗り越える旅inスペインのはじまり、はじまり。

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