vol.2 〜4月 サバイバルスキルを身につける。No Pasa Nada編〜

by Monkurious
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4月。

到着後のショックを和らげるため、
想像しうる最悪のイメージを一生懸命に思い浮かべていた。
「これから野蛮な生活をするのだ、たくましくあれ私!フンフンッ」と眉間にシワを寄せて、
縦に横に飛び跳ねる体をシートベルトで押さえつけながら。(乗用車にこの山道は無理やで友よ。)

「ここだよ。」

👀🌱🌸

事前のショック予防・対策がかなり効いたようだ。
どう見ても心がほわっとゆるんでしまう素敵なところに見えるのだ。

まず目に飛び込んできたのは、キャラバンの目の前の開けたスペース。
きみどり色の葉をつけた細長い木が適度な感覚で生えていて、日当たりが良く、とにかく明るい。木の間をそよ風が通り抜け、空気は澄んでいた。

耳を澄まさずとも川のせせらぎが聞こえてくる。そう、キャラバンからほんの少し降ればすぐ川だった。
遠くには360度気高い山々が見渡せて、どこか外界から守られているような感覚がした。

「ここの鳥はね歌うよ。ピーチクパーチクと言う感じじゃなくて。」

🐤🎶🌿

またまた〜と思いながら耳を澄ますと、思わず目を閉じて聞き入ってしまうほど、心地よいさえずりだった。(今まで30年間生きて来て、初めて鳥の泣き声を癒しだと感じた。)

油断するのはまだ早い。お待ちかねのキャラバン車内。

大阪で一人暮らししていた時のベッドよりはるかに大きいベット。食卓兼団欒スペース、作業台、十分な収納スペースと”冷蔵庫”。
キャラバンに併設された背の高い広々としたテントの中はキッチンスペースになっていて、DIYが得意な友人が作った木製の可愛らしいキッチン台が置いてあった。

心配しまくっていたトイレは、キャラバンの外の少し離れたところにある小屋みたいなスペース。屋根と骨組は木で作られていて、そこに壁の代わりに大きな布が張られている。まぁもちろんボッ○ンなのだけど、ベニヤ板できれいに作られた箱?椅子?の上に、親しみのあるプラスチックの蓋付き便座が設置されている。座るとちょうど目線が行く小屋上部は窓のように開いていて、遠くの山が眺められる設計になっている。虫除けのため、お香を焚きながら用を足すのですが、清潔感は合格だし、御近所キャンパーさんのトイレと比べても、うちのは結構イケてる方だと思う。(トイレの詳細に文字費やし過ぎ?)

なんだか拍子抜けした初日は、
荷物運びと一通りの掃除で疲れ果て、さっとパスタを食べて早めに就寝。

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あぁ、あと7%で社会とのつながりがなくなる。

翌朝、とうとう携帯の充電が切れた。

友人のキャンピングカーには電気がなかった。

昨日は到着してすぐに友人が太陽の下に置いておいてくれたソーラーライトで夜を過ごした。
その日のTo doのスケジューリングを間違うと、日が暮れて作業強制終了となってしまうので、必然的に日の入り時間を気にするようになった。(大阪でオフィス内で働いていた頃は何時に日が落ちるのかなんて1度も気にしたことがなかったな。)

キャラバンの”冷蔵庫”もただの保存箱。ということで日持ちしないものは買わないのが暗黙のルールになっている。まぁアイスは食べられないけどそれほど困っていない。
日持ちする野菜や食材はどんなものかという知識を身につけた。

電気無しでどうやってこのブログ書いてんねんということだが、
幸い御近所さんが太陽光発電を持っているので、電気のお裾分けをしてもらっている。
毎日人ん家に充電しにいくのもあれなので、2日か3日に1回のペースにしていて、充電が切れたらしばらくお預けと言った感じで、半強制的にネットダイエットしている。

起床時・各食事後・就寝前は必ずLINE、WhatsApp、E-mail、Instagram、Facebook、Youtube、BBC、日本のニュースを満足するまで一通りチェックするのが習慣だったけど、この回数や時間も格段に減って割と良い感じだ。以前よりも、自分の周りの環境や自然に目を向ける時間が長くなった気がする。

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朝起きて顔を洗いたかったけど、水道はなかった。
徒歩30秒で着く川まで行って顔を洗った。水は綺麗だし、ひんやりして気持ちいい。
雨や嵐の日はどうするのかな。笑 (どうか定期的に雨よ降ってください。干上がりませんように。)

昨夜の晩ご飯の食器洗い。
友人手作りの洗い場があったが、蛇口がないので、川からタンクで汲んでくる。
川までは少し急な斜面になっているので何度も汲みに行きたくない。できるだけ1回で済ませたい。

苦戦。。。うおぉ、こんなに使ってるのにまだ終わらん。
数回の練習の結果、最小の水でお皿を洗うスキルを身に付けた。

飲み水は車を少し走らせたところで汲める山の湧水を10日分タンクに汲んできて持たせる。
この湧水がとってもおいしい。汲み忘れたら、、、
汲み忘れないようにしている。

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この山奥の中に住んでいるご近所さんは、とっても興味深かった。

まず元からここに住んでいる自給自足コミュニティの人達だ。メンバーは7、8人くらいで、キッチン・ダイニング・バスルームのある建物をみんなで共有していて、それぞれはすぐ近くのキャラバン、古民家、土に変えるような素材で作ったエコビルドの家に住んでいる。
畑や、養鶏、ヤギの世話などのプロジェクトをそれぞれ分担制で行っていて、自分たちが食べるものは出来る限り自分達で育てる自給自足スタイルだ。(他のヨーロッパの国のことはわからないけれど、スペインにはこういったコミュニティがたくさんあるらしい。)
野菜の知識はもちろん、野草やハーブの効能や使い方を熟知していて、よくメモを取りながら教えてもらっている。キッチンにはそれらハーブや保存食、ナッツなどが積められた瓶がたくさん並んでいて魔女のキッチンみたい。

それ以外に、キャラバンを数台見かけたが、まさにこのコロナによるロックダウン期間中のみ都会から一時的に避難して来ている人たちだった。長引くことになりそうだと分かった時点で、都会のマンションの一室に閉じこもるより、山の中のキャンピング生活の方が心穏やかに伸び伸び過ごせるとのことで、やって来たらしい。不思議な社会現象。

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ここまで読んでいただいてお察しの通り、
シャワーは、無かった。

これ、どうするんかな。とモヤモヤもじもじしていたところに、
「そこの川にジャグジーみたいになってるナイススポットを見つけたよ!Vamos!」とバスタオル片手に満面の笑みで友人が呼んできた。

へ!?ちょっと待って私ここに水着持って来てない。どーしよ。と思って
とりあえず「後で行くわ」と言うと、

友人:なんで?😀
私:なんでも。
友人:なんで?😀

   

ギョエー。   

友人は次の瞬間には素っ裸だった。

友人:Who cares? Only your brain cares. Nobody is watching you and even if they see you, so what? No pasa nada.
じゃ、シャワーはなしだね。

と吐き捨て置いていかれたので、
悔しくなってきて百歩譲って下着で入浴。

それ以降御近所さんと川に水浴びに行くことが何回かあったけれどその度に全員素っ裸なので、逆に下着で入るのが恥ずかしいのと、もうなんだかどうでも良くなってきて、
最近ではすっかり真っ裸で水浴びしてます。日本に帰国したら控えます。

ちなみに、都会、神戸の普通の街で育ったので、周りの友人や家族にはショックが大き過ぎるだろうと思ってシャワーは川で水浴び。(生分解性の高い石鹸とシャンプーにて。環境保護大事。)という真実は今日現在まだ言えていません。

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とある週、3日連続で一時も止むことなく雨が降ってキャラバン車内に缶詰めだった。
ほぼ敷地から外に出ず、読書やスペイン語の勉強でなんとか時間を潰していたら御近所さんから電話が鳴った。

「川が氾濫していつもの橋が流されてるからしばらく動けないね。大丈夫?」

!?!?

私たちの場所から下界につながっている向こう岸に渡る唯一の橋が流されていた。

No pasa nada(そんな心配することじゃないわ)と言い残した後、
気付いたら友人はいなくなっていてしばらく帰ってこない。

何してるんだろと呑気に車内でポテチを食べていたら、
疲れて帰って来た。

他に渡れそうなポイントを探し、そこらへんの木を切り倒して簡易の橋を作って来たらしい。

あ、この人といればとりあえずなんとかしばらくここで生きれそうと思った瞬間だった。
と同時に自分のサバイバルスキルの低さに気付いてしまった瞬間でもあった。

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小さな(私にとっては大きな)カルチャーショックや困ったことが起こる度に「わーどうしよ!どうする!?」と驚く私に、友人は「No pasa nada(そんな心配することじゃないわ)」と言い、どうにかする。

前回の「失敗してもいいからやってみ」に加え、大抵のことはNo pasa nada(そんな心配することじゃないわ)」なので、だんだんそれが染みついて来て、あんまり色んなことに動揺しなくなってきて、とりあえずなんとかする力が少しづつ付いてきた。
多分これがサバイバルスキル習得への一歩。

そんなこんなで始まったキャラバン生活はなかなか楽しくて、
1週間が過ぎ、気づけば4月が終わっていた。気付いたらしばらくニュースを見ていなかったけど、結局4月中にロックダウンが解除されることはなかったらしい。

最近、友人はキャラバンの周りの開けたスペースを耕し、毎日何かを植えている。

何か新しいことを始めるらしい。

なんか、どうとでも生きれるな。笑 

つづく。

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